Alex Hill(アレックス・ヒル)は、英国ロンドン・ビジネス・スクール教授、The Duke of Edinburgh’s Award・The Centre for High Performance共同創設者。本書(原書『Centennials』2023、邦訳『センテニアルズ “100年生きる組織”が価値をつくり続ける12の習慣』2024/東洋経済新報社)は、100年以上続く世界の組織(ロイヤル・ホースガーズ、NASA、トヨタ、Royal Shakespeare Company、Yale University等)を10年間追跡研究した、長寿組織論の最新作。Goodreads星4.1、英国経営書界で話題になった一冊。
“勝つ組織“と”長く続く組織“は別物——本書全体を貫く出発点。短期的成果でなく、100年スパンの持続力を見る。
本書の12の習慣を、テーマ別に整理する
Part 1 北極星を持つ(Purpose)
- 習慣1: “なぜ存在するか”を、創業時から変えない。NASAの月探査、トヨタの”人を中心に置いた生産”、Shakespeare Company の”戯曲を生かす“——どの組織も核となる目的が100年揺らがない。
- 習慣2: 短期の業績圧力に流されず、長期目的に立ち戻る仕組み。
Part 2 ステーブル&ダイナミック(Stability + Adaptability)
- 習慣3: 不変の核(Mission, Culture)と、変化する周辺(Product, Method)を意識的に分ける。
- 習慣4: “進化”と“変革”を混同しない。100年組織は、進化を続け、稀に大変革を行う。
Part 3 人を育てる(People)
- 習慣5: 後継者育成を、即戦力でなく“10年単位”で考える。Royal Horseguardsは”10年で士官、20年で指揮官”。
- 習慣6: “組織文化”を、文書ではなく日常の儀礼で伝える。
Part 4 知を蓄積する(Knowledge)
- 習慣7: 失敗の記録を、組織の財産として残す。NASAのチャレンジャー事故・コロンビア事故の事例研究。
- 習慣8: 外部の知を、定期的に取り込む仕組み(他組織との交流・学者の招聘・若手の留学制度)。
Part 5 リーダーシップの設計
- 習慣9: “トップ依存”でなく、リーダーシップが組織のいたるところに分散している状態。
- 習慣10: トップは”象徴であって決定者ではない”場面が、100年組織には多い。
Part 6 外部との関係
- 習慣11: “顧客”でなく“利害関係者”として、社会・地域・歴史と関わる。
- 習慣12: 100年単位の“寄与”を組織の評価軸に組み込む。短期のROIだけで判断しない。
世界の組織論との位置づけ
本書は、Jim Collins『Built to Last』『Good to Great』、Peter Senge『The Fifth Discipline』、Edgar Schein『Organizational Culture and Leadership』、Frederic Laloux『Reinventing Organizations』、Patrick Lencioni『The Advantage』など、現代経営の主要古典と地続き。Hillの貢献は、これらに“10年×複数組織の実地研究”という新しい証拠基盤を加えたこと。
YouTubeでは「Alex Hill Centennials」「Built to Last Jim Collins」と検索すると、本人講演・London Business Schoolのレクチャー、Jim Collinsとの関連動画が観られる。本書を読んだ後の副教材として優秀。
明日からの3つの実装
1. 自分の組織の“北極星”を、紙に書いてみる
“100年後も、この組織がやっているべきこと”は何か。経営者・幹部だけでなく、現場メンバーも問うことができる。
2. “不変の核”と“変化する周辺”を、線で分ける
組織の現状を、変えてはいけない部分と、むしろ積極的に変えるべき部分に分類する。両者の混同が、組織の停滞・崩壊を呼ぶ。
3. “10年スパンの後継者育成”を、計画する
現職者の代わりに、10年後に主軸を担う人材を、誰にどう育てるか。短期業績偏重から、長期人材投資へ。
関連書と、読む順番
- 本書(まず最新研究の全体感)
- 『Built to Last』Jim Collins(現代古典)
- 『The Fifth Discipline』Peter Senge(学習する組織)
- 『Reinventing Organizations』Frederic Laloux(進化する組織形態)
読むときに、気をつけたい点
本書の対象は“100年以上続いている組織”。スタートアップ・テック企業・3-10年規模の組織にそのまま適用するのは難しい。“思想を抽出し、自社の段階に合わせて翻訳する”のが正解。とはいえ、創業期から”100年後の姿”を意識する経営は、稀有な強みになる。
こんな人に合いそう
- 経営者・幹部で、長期視点を再確認したい人
- 家業・伝統産業・歴史ある組織に関わる人
- 新しい組織を立ち上げる前に、100年続く設計を考えたい人
おわりに
“長く続く“組織を見ると、現代の”スピード至上主義”とは違う価値観が見える。本書はその静かな対照軸を、データで裏付けた稀有な経営書。経営の本棚に、長期視点の灯台として置きたい。



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