『アウトプット大全』樺沢紫苑|出すことでしか、人生は変わらない (2018)

『学びを結果に変えるアウトプット大全』樺沢紫苑 表紙 学び・自己成長
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『アウトプット大全』は、「学びを結果に変えるのは、インプットではなくアウトプットだ」と言い切る本です。どれだけ本を読み、動画を見ても、それだけでは身につかない。読んだことを話す、書く、行動に移す——そうやって「出す」ことではじめて、知識は記憶に定着し、人生を動かしはじめます。著者は精神科医の樺沢紫苑氏。アウトプットのコツを、80の項目に分けて、見開き完結でまとめた実践的な一冊です。

私たちはつい、インプットばかりを増やしがちです。新しい本、新しい情報、もっと知らなきゃ、と焦る。でも本書は、その逆を勧めます。集めることより、出すこと。学びの量ではなく、出した回数こそが、成長を決める。読むだけで満足していた自分に、軽く冷や水をかけてくれる本です。読んだきり、誰にも話していない本が、本棚に何冊ありますか?

どれだけ読んでも、出さなければ何も変わらない。
学びを記憶と結果に変えるのは、書く・話す・行動するという「出す」側の行為だ。

著者と本の立ち位置

著者の樺沢紫苑氏は、精神科医でありながら、「日本一、情報発信する医師」を名乗るほど、発信を続けてきた人です。本、メールマガジン、動画と、毎日のように何かを出し続けています。本書は、その膨大なアウトプット経験そのものから生まれた、いわば実践報告でもあります。

脳科学や心理学の知見を、誰でもできる行動に翻訳するのが、この著者の持ち味です。本書も、難しい理屈は最小限。「では具体的にどう出すか」を、挨拶や雑談、説明やプレゼンといった日常の場面ごとに、こまかく示してくれます。

なぜ「インプット」より「アウトプット」なのか

本書の土台にあるのは、「人は、出したことしか身につかない」という考え方です。情報をただ受け取るだけでは、脳はそれを重要だと判断せず、すぐに忘れてしまいます。ところが、書いたり話したり、実際に使ったりすると、脳は「これは大事な情報だ」と見なし、長期の記憶に移していきます。

3対7、そして「2週間で3回」

著者が挙げる目安が、印象的です。インプットとアウトプットの黄金比は「3対7」。学ぶ時間の倍以上を、出すことに使え、というのです。さらに、得た知識は「2週間で3回」使うと、定着しやすくなります。集めて満足するのをやめ、こまめに出す。たったそれだけで、同じ学びでも残り方がまるで変わってきます。

銅のじょうろから土に落ちる細い水。溜めずに出すことのイメージ

アウトプットの三本柱——書く・話す・行動する

本書は、アウトプットを三つの基本に整理します。「書く」「話す」「行動する」です。

感想をひと言、誰かに伝えるだけでいい

「話す」は、いちばん手軽なアウトプット。読んだ本の感想を、誰かに一言伝えるだけでいい。「書く」は、さらに記憶に残りやすくなります。手で書くことで、脳がより強く反応します。そして「行動する」は、最強のアウトプット。学んだことを実際にやってみてはじめて、知識は経験に変わります。どれも特別な技術はいりません。大事なのは、インプットしたら必ず一回は出す、という流れを、習慣にしてしまうことです。うまさは、回数のあとからついてくる。

土に打ち込まれた太さの違う三本の木の杭。三本柱で支えるイメージ

資料を作った私が、いちばん覚えていた

「教えることが最大のアウトプット」という主張は、いままさに体感しています。私はいまリテールのサポートをしていて、店頭スタッフ向けにテニス関連の商品知識を体系的な資料にまとめたことがあるのですが、いちばん記憶に焼き付いたのは、教わったスタッフではなく、作った私自身でした。人に渡せる形に整理する過程で、あやふやだった知識の穴が全部見えるんです。

ちなみに人前で話すことはいまだにとても苦手です。それでも管理職としてスタッフを指導する経験を重ねるうちに、昔よりは少しずつマシになってきた気がします。アウトプットは得意な人のものではなく、苦手な人ほど「回数」で改善していくものかもしれません。

明日から試せる3つのこと

  • 本や動画で何かを学んだら、その日のうちに誰かに一言、内容を話してみる。
  • 心に残ったことを、短くていいのでメモに書き出す。手で書くと、記憶への残り方が変わる。
  • 学んだことの中からひとつだけ選び、実際に行動に移す。知識を、経験に変える。

うまくやろうとしないこと。それが、続けるいちばんのコツです。下手でも、短くても、まず「出す」。その回数が積み重なるほど、学びは確実に自分のものになっていきます。

掘り下げの浅さより、実行できるかどうか

80項目を網羅した「大全」なので、一つひとつの掘り下げは浅めです。見開きで完結する構成は読みやすい反面、深く知りたいテーマは物足りなく感じることもあるでしょう。気になった項目だけ拾って、まず試す——そんなカタログ的な使い方が合っています。

また、書かれていることの多くは、「言われてみれば当たり前」のことです。けれど、その当たり前を実際にやれている人は、驚くほど少ない。新しい知識を得る本というより、「知っているのにやっていなかったこと」を、背中を押して実行させる本だと思って読むのがいいでしょう。

こんな人に効きそうか

本や勉強会で学んでも、いつのまにか忘れてしまう、身についた気がしない、という人。インプットばかりが増えて、消化しきれていない人。そんな読者に欠けていた最後のピースが、「出す」という一手です。

逆に、すでに発信や実践を習慣にしている人には、目新しさは薄いかもしれません。これは、学びの入り口で立ち止まっている人を、行動側へ押し出すための本だからです。

読み終えて

朝の光が当たる古い石段の一段目。まず一段目を踏み出すイメージ

読む前の私は、インプットこそ勉強だと思っていました。読み終えたいまは、「出してはじめて完成する」と思っています。もっと知らなきゃ、と情報を追いかけるより、いま手元にある学びをひとつ、誰かに話してみましょう。書いてみる。やってみる。その小さな一歩のほうが、ずっと自分を変えていきます。出す側に回った日から、覚え方が変わりました。

この本自体を、読んで終わりにしない

そして何より、この本自体が、読んで終わりにしてはいけない本です。ひと項目でいいので、今日さっそく出してみましょう。それが、本書のいちばん正しい読み方です。

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