経済評論家・山崎元氏による、「お金で損しないための原則」を平易な言葉でまとめた1冊です。日経BP、2018年。山崎氏は2024年に亡くなるまで、楽天証券経済研究所の客員研究員として、一貫してインデックス投資と長期分散を提唱し続けた人物でした。本書はその思想の、いちばん平易な入口にあたります。
「売り手の側の事情」というものは、アパレルの売り場に約20年いた人間として、よく分かります。店頭で強く勧められる「おすすめ」が、必ずしも買う側の最適とは限らない——服も金融商品も、その構造は同じです。だから本書の「売られている商品に気をつける」という視点は、意地悪ではなく、実務的な知恵だと感じます。
本書のメッセージを一文で

目次に沿って、章ごとのポイント
- 避けるべき商品:「販売手数料が高い・運用報酬が高い・複雑な仕組み」の3点が揃った商品は、基本的にNGです。
- 銀行・保険のセールス:窓口で勧められる商品は、売り手にとって都合がいいもの。買い手の側からは、多くの場合「損」が前提になっています。
- シンプルな投資:インデックス投資信託+低コストETF。本書のスタンスは2018年から一貫してこれです。
- 住宅の判断:「買うか借りるか」より「住居費を生涯コストとして見る」発想です。
- 家計と人生設計:お金は道具。生涯収支を一度ざっくり計算するだけで、不安は大幅に減ります。
本書と並走する世界の議論
- ジャック・ボーグル氏『敗者のゲーム』『インデックス投資は勝者のゲーム』:山崎氏がもっとも影響を受けた米国の運用家。低コストインデックスの思想は世界共通です。
- バンガード社のデータ:アクティブファンドの過半数が長期で市場平均に勝てないことを、20年以上の追跡調査で証明しています。
- 米国 FTC(連邦取引委員会)の警告:高手数料・複雑商品に対する消費者保護の論調です。日本の金融庁の「顧客本位の業務運営原則」と方向は同じです。
- YouTube「投資塾 by 経済評論家」など、日本の投資系チャンネルでも山崎理論を解説する動画が多数あります。
- 批判的視点:「インデックス一辺倒は、銘柄選択の楽しみを奪う」という声もあります。本書はそれを承知のうえで、「楽しみよりも、損しないこと」を選んでいます。

読者が持ち帰れる3つのヒント
① 持っている金融商品の手数料を1つ調べる
銀行で勧められた投信、生命保険の積立、変額年金——いま持っているもの1つだけでいいので、信託報酬や販売手数料を調べてみてください。年1%以上の手数料があれば、本書の基準では再検討の対象です。
私も投資信託を選ぶときは、手数料を最初に見るようになりました。つみたてNISAの積立も、コストの低さと長く続けられるかどうかだけで選んでいます。
② つみたてNISA・iDeCo を未活用なら設定する
本書執筆時の旧NISAと違って、2024年からの新NISAはさらに有利になりました。山崎氏の最晩年の著作『経済評論家の父から息子への手紙』にも書かれているとおり、活用しないこと自体が損失の一形態だといえます。
フリーランスになってからは、この手の制度まわりを自分で調べて決める場面が増えました。会社員時代にこういう入口の一冊があれば、もっと早く動けていたはずです。
③ 住居費を生涯コストで眺める
持ち家か賃貸かではなく、「自分が80歳まで支払う住居費の合計はいくらか」を一度計算してみましょう。本書の住宅の章は、ここだけでも読む価値があります。
関連書と読む順番
- 山崎元氏・大橋弘祐氏『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』──対話形式の入門書。本書より平易です。
- 山崎元氏『経済評論家の父から息子への手紙』──遺作。お金観の総まとめです。
- チャールズ・エリス氏『敗者のゲーム』──インデックス投資の世界的な古典。山崎理論の海外版です。
- ニック・マジューリ氏『JUST KEEP BUYING』──データで証明する積立投資。本書と完全に同じ方向です。
新NISA以前の制度を前提にした章が混じる
2018年の本なので、新NISA以前の制度を前提にした章もあります。ただ、原則の章はいまでも全部そのまま使えます。AIで投資の自動化が進む時代になっても、「売られている商品に気をつける」という根本は変わりません。
こんな人に合いそう
- 銀行・保険のセールスに乗りそうな人
- 『経済評論家の父から息子への手紙』を読んで、もっと山崎元氏の声を聞きたい人
- 派手な投資本に疲れた人
おわりに

儲ける前に、損しない。シンプルですが、これを守れる人は驚くほど少ないものです。山崎元氏という人が一貫して書き続けた原則を、もっとも平易な言葉で受け取れる入り口の一冊です。
📖 『お金で損しないシンプルな真実』 山崎元



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