楽しみを後回しにしない|毎日を楽しめる人の考え方 樺沢紫苑(2022)

仕事が落ち着いたら、好きなことをしよう。そう思っているうちに、楽しみの予定だけが先延ばしになることがあります。
精神科医・樺沢紫苑氏の『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版、2022年)は、その時間の使い方を問い直す一冊です。遊びがもたらす効果、自己成長につなげる方法、日常で楽しみを増やす工夫を、4章にわたって扱っています。
第1章で掲げられる言葉が、本書の出発点です。
「楽しい」は、自分でコントロールできる!
待っていれば楽しい出来事が起きる、という話ではありません。何を選び、どう関わり、いつ時間を取るか。その選び方に目を向けると、本書の提案がぐっと身近になります。
仕事と遊びを、奪い合う関係にしない
第1章では、日本人が休みを取りにくいことや、アリとキリギリスの寓話を入り口に、「仕事か遊びか」という二者択一を疑います。第2章で著者が挙げる遊びのメリットは、次の5つです。
- 創造性を鍛える
- さまざまな仕事力を高める
- チャレンジする力を養う
- 心と身体の健康につなげる
- 幸福につなげる
ここで注目したいのは、遊びの価値を気晴らしだけに限定していない点です。仕事の外で夢中になることも、発想や挑戦する姿勢を育てる時間になりうる。著者は、仕事と楽しみを対立させずに捉えています。
ただ、遊べば必ず仕事で成果が出る、と受け取るのは飛躍です。私はむしろ、忙しいからと楽しみを削り続ける前に、そこで得ていたものを見直す問いとして受け取りました。
同じ遊びでも、6つの掛け算で関わり方が変わる
第3章は、良い遊び方と悪い遊び方を区別したうえで、楽しみを深める6つの組み合わせを紹介します。ポイントは、趣味を次々に増やすことよりも、いま好きなことへの関わり方を変えることです。
- アウトプット:楽しんだことを言葉や記録にする
- リラックス:心身を休める時間として楽しむ
- 一緒に:誰かと楽しみを共有する
- 時間術:楽しむための時間をつくる
- チャレンジ:楽しみながら新しいことに挑む
- 運動:身体を動かすことを楽しみにする
たとえば映画なら、感想を書くことも、誰かと話すこともできます。同じ作品でも、どのように関わるかで楽しみ方は広がる。この視点が、6つの掛け算を日常で使う手がかりになります。
記録を残す楽しさと、その場を味わう時間
「遊び×アウトプット」は、楽しみを経験したままで終わらせず、感想などとして外に出す考え方です。何が面白かったのかを言葉にすると、自分がどこに惹かれたのかにも目が向きます。
この考え方に触れて思い当たったのが、旅先での記録です。私は食べログや写真に残そうとするあまり、撮影のタイミングを気にしすぎて、その場を十分に味わえていなかったこともあったかもしれません。
今は撮影したあと、意識してその場の雰囲気や味を楽しみ、感想は家に帰ってから残すようにしています。記録が貯まることには満足感があり、あとから振り返って懐かしむ楽しみもあります。
私には、体験する時間と振り返る時間を分けるやり方が合っています。アウトプットを増やすことだけを目標にせず、まず十分に味わう。そのうえで残したいことを言葉にするなら、本書の提案を無理なく取り入れられそうです。
遊ぶ予定を持つと、仕事の終わらせ方も具体的になる
「遊び×時間術」では、スキマ時間の活用、15分の遊びタスク、終わりの時刻を決めるケツカッチン仕事術、遊びのスケジュール化などが登場します。長い休暇を待つだけでなく、小さな時間も使う発想です。
仕事の予定には時間を確保するのに、好きなことは「空いたら」にしてしまう。その違いを見直す提案として読むと、時間術が身近になります。やりたいことを先に決めれば、いつ、どれくらい時間が必要かも考えやすくなるからです。
私は仕事の日とプライベートの予定を分けることが多く、夜遅くまで働く日にテニスを入れることはほとんどありません。以前は仕事前にテニスをすることもありましたが、その後に一日働くと疲れるため、最近はあまりしなくなりました。
それでも楽しみにしている予定があれば、早く上がれるように仕事を調整することはあります。毎日に予定を詰め込まなくても、楽しむ時間を自分で確保する、という本書の発想は活かせると感じます。
休むことも、身体を動かすことも遊びに含まれる
リラックスの項目では、入浴、交流・コミュニケーション、日記・ジャーナリングが紹介されます。一方、運動の項目では、短い朝散歩、普段の歩き方の工夫、自分に合う運動を探すことへと話が進みます。
同じ「遊び」でも、静かに休むものと、身体を動かすものが並んでいるのが本書の幅広さです。刺激の強い娯楽や遠出だけを思い浮かべなくてよい。今日の自分には休息が必要なのか、誰かと話したいのか、と選ぶ入口がいくつもあります。

8つの極意は、日常を少し変えるヒントになる
第4章では、遊びをさらに深める8つの方法が示されます。
- 感動する
- 没入する
- 工夫する
- お金をかけない
- 集う
- 制限する
- 歳をとっても遊ぶ
- 収入を得る
感動の項目では映画や小説などの物語、ライブ、美術鑑賞が取り上げられ、没入の項目では能動的に楽しむことに目が向けられます。単に暇を埋めるだけでなく、自分が心を動かされる対象を探す章として読めます。
遠くに出かけなくても、少しの工夫で楽しみは生まれる
「工夫する」「お金をかけない」の項目が、暮らしに引き寄せやすいところです。豆苗を育てる、日常を少しだけ贅沢にする、食事のトッピングを変える。取り上げられるのは、特別な準備がなくても試しやすい楽しみです。
この身近さは、私の休日にも重なります。パートナーと行ったことのない公園や場所を散歩したり、買い物をしたり。おやつを買って、家でのんびりコーヒーを飲む時間も楽しみの一つです。
公園までの散歩と家でのコーヒーは、特別なイベントではありません。それでも、行き先や過ごし方に少し変化をつけられる。本書の工夫という視点は、日常にある楽しみを見つけ直す助けになります。
楽しみを続けるために、区切ることも考える
遊びを勧める本に「制限する」という項目があるのも大切です。スマホ、お酒、動画サービスとの付き合い方を扱い、楽しみが生活を圧迫する方向へ進まないように目を向けています。
第3章でも良い遊び方と悪い遊び方を分けているため、本書を「好きなことなら際限なく続けてよい」という勧めとして読むことはできません。何を楽しむかに加えて、どこで区切るかまで考える構成です。
また、歳をとっても遊ぶことや、遊びを収入につなげる可能性にも触れています。すべてを実践する必要はなく、いまの暮らしに取り入れたい方向から選ぶと読みやすいと思います。
まずは、好きなことの楽しみ方を一つ変えてみる
本書が合いそうなのは、休日をどう過ごしたいか分からない人や、仕事以外の時間をいつも後回しにしてしまう人です。映画、食、運動、交流まで選択肢が広く、趣味を新しく見つけたいときにも、いまの楽しみ方を見直したいときにも入口があります。
一方で、楽しみのすべてを成長や仕事の成果に結びつけようとすると、窮屈に感じる人もいるでしょう。私自身は、記録を残すことにも、その場で味わうことにも、それぞれ良さがあると感じています。提案を全部こなすより、自分に合う一つを試すくらいから始めたいところです。
本書の考え方を暮らしで試すなら、たとえばこんな小さな行動が考えられます。
- 次の休みに楽しみたいことを一つ決め、予定に入れる。
- 楽しんだあと、心に残ったことを短く記録する。
- いつもの散歩道や食事に、小さな変化をつける。
楽しむために、大きく生活を変えなくてもよい。時間の取り方、体験への関わり方、日常の小さな工夫。そのどこか一つから、好きなことをもう少し大切にできそうです。
TSUME
ブログ運営者
TSUMEノートは、人生の4本柱(人間関係・健康・お金・学び)を少しずつ良くするための読書メモです。アパレル業界で約20年、店頭のアルバイトから店長、最大8店舗のスーパーバイザーまで経験し、40代でフリーランスになりました。独立を視野に古物商の資格も取り、いまはテニス関連の仕事とファッションのスタイリングをしています。30代後半から続けている読書が、読んでくれた方のヒントになればうれしいです。
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