『愛を伝える5つの方法』ゲーリー・チャップマン|届かない愛情の正体は、言語のミスマッチだった (2007)

ai-wo-tsutaeru-5tsu-no-houhou-aikyacchi-1400x786 生き方・人間関係
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『愛を伝える5つの方法』は、「愛しているのに、なぜか伝わらない」という、多くの人が抱えるすれ違いの正体を、鮮やかに解き明かす本です。著者の結婚カウンセラー、ゲーリー・チャップマン氏によれば、人は愛を、5つの「言語」のいずれかで、表現し、受け取っている。そして、自分の言語と相手の言語が違うと、どれだけ愛を注いでも、それが相手に届かない——本書は、そう指摘します。

面白いのは、愛が伝わらない原因を、「愛情の量」ではなく「言語のミスマッチ」に見出すところです。あなたは精いっぱい愛しているのに、相手が「愛されていない」と感じてしまう。それは、あなたの愛が足りないのではなく、相手が受け取りやすい「言語」とは、別の言語で伝えているからかもしれない。この視点の転換が、こじれた関係に、思わぬ光を当てます。五つのうち、自分がいちばん愛を感じるのはどれでしょうか?

愛が伝わらないのは、愛が足りないからではない。
相手の「愛の言語」と、違う言語で伝えているからだ。

著者と本の立ち位置

著者のゲーリー・チャップマン氏は、アメリカで長年、夫婦やカップルの相談に乗ってきた結婚カウンセラーです。数えきれないほどの「すれ違う二人」と向き合うなかで、ある共通のパターンに気づきます。愛し合っているはずなのに、お互いに「愛されていない」と感じている——その背景には、愛の伝え方と受け取り方の「ずれ」があったのです。

本書は、その気づきを「5つの愛の言語」という、わかりやすい枠組みにまとめたものです。アメリカ発で、もともとは夫婦関係を念頭に書かれていますが、その考え方は、文化や国を超えて通じます。日本の読者にとっても、家族や恋人、友人との関係を見直すヒントとして、十分に役立ちます。

「5つの愛の言語」とは

本書がいう「愛の言語」とは、愛情を表現し、感じ取るときの「チャンネル」のようなものです。チャップマン氏は、それを大きく五つに分けます。

  • 肯定的な言葉 「ありがとう」「すごいね」といった、ほめ言葉や感謝の言葉で愛を感じる
  • クオリティタイム 一緒に過ごす、密度の濃い時間そのものに、愛を感じる
  • 贈り物 高価さではなく、「自分を思って選んでくれた」という気持ちに愛を感じる
  • サービス行為 手伝いや世話など、相手が自分のためにしてくれる行動に愛を感じる
  • 身体的なタッチ 手をつなぐ、ハグするといった、肌のふれあいに愛を感じる

メインの言語は、人によって違う

大事なのは、人それぞれ、いちばん「愛を感じやすい言語」が違う、ということです。言葉で言われたいか、時間を共にしたいか、何かしてもらいたいか。そのメインの言語が、人によって異なります。

同じ風を受けながら受け方の違う二枚の麻のシーツ。愛の言語のミスマッチのイメージ

すれ違いの正体——愛の言語のミスマッチ

ここから、すれ違いの正体が見えてきます。人は多くの場合、「自分が受け取りたい言語」で、相手に愛を伝えようとします。たとえば、言葉でほめられたい人は、相手のこともよくほめる。何かしてあげたい人は、せっせと尽くす。でも、相手のメインの言語が、それとは別だったら——どんなに一生懸命でも、その愛は、相手の心に十分には届きません。同じ努力が、宛先違いで空振りする。

まず相手の言語を探し、それから翻訳する

だから本書がすすめるのは、まず「相手の愛の言語」を見つけることです。相手は、どんなときに、いちばんうれしそうにするか。何をされると、不満をもらすか。そこに、相手の言語のヒントがあります。自分の言語で押し通すのではなく、相手の言語に翻訳して愛を伝える。たったそれだけで、同じ愛情が、ずっと深く伝わるようになります。

明るい午前の小卓に、わずかに寸法の合わない陶の器と蓋。隙間に光が差す。愛の言語のミスマッチのイメージ

私のすれ違いも、「言語」の違いだった

この本のテーマには、苦い実感があります。私は人生で「自由」の優先順位が高い人間で、その性格は相手も分かってくれているはずだと思って日常を送っていました。ところが実際には、「自分に興味を持ってくれていない」と映っていたようで、幻滅させてしまったことがあります。

記念日に贈り物をして、レストランを予約して——という定番の形が、私はもともと苦手でした。どこか義務のように感じてしまうからです。その代わり、何でもない日に前触れなくサプライズで旅行に連れ出したり、余裕があれば海外で一緒に時間を楽しんだり、そういう形で伝えたいタイプでした。いま思えば、私は「一緒に過ごす時間」の言語で語り、相手は別の言語で受け取っていた。悪気のないボタンのかけ違いが関係をこじらせることは、本当にあるんです。だからこそ、「自分の流儀」ではなく「相手に届く形」で伝えるという本書の発想は、経験した身として強くおすすめしたい視点です。

明日から試せること

  • 大切な人が「どんなときに、いちばんうれしそうか」を、一週間、そっと観察してみる。そこに相手の愛の言語がある。
  • 自分は、何をされると愛を感じるのか——自分のメインの言語を、ひとつ言葉にして、相手に伝えてみる。
  • 相手の言語に合わせて、ひとつだけ行動してみる。言葉が好きな人にはほめ言葉を、時間が好きな人には一緒の時間を。

五つ全部でなくていいので、まずは相手の「当たり前」を、自分の物差しで測らないことから。愛は、自分のやり方で量を増やすより、相手の言語に翻訳するほうが、ずっとよく伝わります。

相手を「5つ」に分類しはじめたら要注意

見落としたくないのは、「5つ」という分類は、あくまで目安だということです。人の気持ちが、きれいに五つに分かれるわけではありませんし、相手や状況によって、響く言語は変わります。型に当てはめて、相手を決めつけるための道具にしては、本末転倒です。

キリスト教文化と夫婦関係を前提に書かれている

また、本書はもともと、キリスト教文化を背景に、夫婦関係を念頭に書かれています。例の一部には、日本の暮らしとは少し感覚の違う場面もあるかもしれません。それでも、「相手の受け取りやすい形で愛を伝える」という核は、恋人にも、家族にも、友人にも、職場の人間関係にさえ応用できる、普遍的なものです。

こんな人に効きそうか

パートナーや家族に、精いっぱい尽くしているのに、なぜか気持ちが通じないと感じている人。あるいは、自分はちゃんと愛されているのか、不安になることがある人。そういう人に、すれ違いを解く新しい視点をくれます。

人間関係をもっと論理的・体系的に分析したい人には、シンプルすぎるかもしれません。本書が引き受けるのは、日々の実践のところまでです。これは、複雑な理論の本ではなく、「伝え方の翻訳」という、ひとつの実用的な気づきを手渡す本だからです。

読み終えて

明るい午前の澄んだ小川で、両岸の石に一枚だけ渡された古い木の板。相手の言語で愛が通い合うイメージ

私はまず、身近な人が何を「愛」と受け取るのかを、観察してみようと思いました。愛は、量より翻訳だ——そう教わった気がします。私たちはつい、「もっと愛さなきゃ」「もっと尽くさなきゃ」と、量を増やそうとします。でも、相手に届いていないなら、増やすべきは量ではなく、伝え方のほう。相手の言語に翻訳するだけで、いまある愛が、ちゃんと届くようになります。一度すれ違いを経験した身としては、この“翻訳”の発想だけでも十分に元が取れると思います。

まずは、大切な人の「うれしそうな瞬間」を、ひとつ思い出してみる。そこに、その人の愛の言語が隠れています。それに気づくことが、すれ違いをほどく、最初の一歩になります。

📖 『愛を伝える5つの方法』 ゲーリー・チャップマン

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