『多忙感』菅原洋平|「成果」と「余裕」を同時に手に入れる、タスクまみれ解消術 (2025)

『多忙感』菅原洋平 表紙 学び・自己成長
この記事は約6分で読めます。

やることを一つ片づけても、すぐ次の用事が気になる。仕事は進んでいるはずなのに、一日の終わりには追われていた感覚ばかり残る。そんな忙しさを、作業の量だけで考え直すのは難しいのかもしれません。

菅原洋平氏の『多忙感』は、実際に仕事が多い状態と、忙しいと感じ続ける状態を分けて捉える本です。効率化の工夫を増やす前に、今の自分がどんなふうに仕事を進めているかを振り返る。その視点が、普段の段取りを見直すきっかけになりました。

仕事の量だけでなく、自分で進め方を選べているかに目を向ける。

本書の趣旨を私なりに要約

忙しさを、仕事量だけで説明しない

著者は、国立病院機構で脳のリハビリテーションに携わってきた作業療法士です。出版社の紹介では、作業のやり方と脳の関係を踏まえ、集中しやすい仕事の進め方を扱う本とされています。

第1章は頭の中の忙しさ、第2章は物忘れ、ぼんやりすること、時間があっという間に過ぎる感覚を取り上げます。私は、ここを「忙しいのは自分の能力が足りないから」と決めつける前に、何に注意を取られているかを考える入口として読みました。

ただ、実際の仕事量と忙しさの感覚は、いつもきれいに分けられるわけではありません。締め切りが重なり、担当できる量を超えているなら、業務の調整も必要です。本書の視点は、負担を全て本人の気の持ちように置き換えるためのものとしては使いたくありません。

私にも、店長やスーパーバイザーとして指示や進捗報告に追われていた頃、手元の仕事に集中しにくかった実感があります。仕事を終えることに加えて、報告のことも気にしている。その経験を振り返ると、件数だけでは表せない負担があったのだと思います。

新しく来た依頼を、すぐ最優先にしない

第3章の中心は、自分が行動を進めていると感じる「行為主体感」です。出版社が公開している本書の抜粋では、仕事そのものを変えられなくても、取り組む順番や時間帯、場所には工夫の余地があると説明されています。

ここは、日々の仕事に置き換えやすいところでした。途中で依頼が来たら、私はまず緊急度を確かめます。短時間で仕上げられそうなら先に終えることもあります。細かな用事が減ると、残った大きな仕事に腰を据えて向き合いやすいと感じるからです。

もちろん、その間に大きな仕事が後ろへずれることもあります。そちらの優先度が高ければ、小さな仕事は保留にします。「簡単なものから」という順番を守るより、今は何を先にすべきかを、その都度決めるようにしています。

新しく来た仕事は、今すぐやる必要もある?

この問いは、依頼を後回しにするためではなく、順番を確かめるためのものです。本書の内容紹介にも、通知の新しさと緊急性を見分ける視点があります。受け取った順番だけで動かず、判断を一つ挟む。その小さな違いなら、普段の業務でも試せそうです。

片付いた机の上の小さな置き時計と開いたノート、一輪の緑と湯気の立つカップ、朝の光 — 忙しさの中に余裕が生まれる瞬間のイメージ

メモは、書いたあとに見返してこそ役に立つ

第4章は注意力を守ることを扱います。作業を同時に進めすぎないことや、終わるまで続ける代わりに時間で区切ることなどが、本書で紹介されています。私には、何をするかと同じくらい、何を今は抱えなくてよいかを決める話として響きました。

最近の私のメモは、仕事のToDoリストとして使うことが中心です。依頼が来たら書き、終わったものにチェックを入れます。忙しいと細かな用事が頭から抜けることもありますが、リストを見返す習慣があれば、残っている仕事に気づけるので助かっています。

大事なのは、メモを作っただけで安心せず、見返すところまでを普段の動作にすることでした。私が実感しているのは、仕事の漏れを防ぎやすくなることです。この習慣で脳の働きがどう変わったかまでは分かりませんが、覚えているかどうかだけに頼らずに済みます。

一方で、リストを細かく分けるほど使いやすいとも限りません。本書の問題提起を踏まえると、項目を増やした結果、眺めるだけで圧倒されていないかも確かめたいところです。私なら、チェックの数より、次に取り組む仕事を選べるかを目安にします。

大きな仕事は、全体を見てから一つずつ詰める

第5章は、周囲への反応に追われる進め方から、自分で行動を組み立てる進め方への転換を扱います。第3章の行為主体感を、日々の段取りでどう持つか。そうつなげて読むと、抽象的な言葉が自分の仕事に近づいてきます。

大きな仕事に入るとき、私はまず完成形と全体の構成をざっと考えます。そのうえで必要なデータを集め、何から着手するかを決めます。全体を眺めているだけでは細部が詰まらないので、不明な点を一つずつ掘り下げ、形になったところで再び全体を見返す、という進め方です。

これでも、データがそろわなかったり、自分の解釈が違っていたりして、手が止まることはあります。AIで解決することも増えましたが、会社固有の進め方や分野特有のコツは、経験のある先輩に聞いたほうがつかみやすい場合もあります。

自分で進めることは、一人で全てを解決することとは違います。何が分からないのかを確かめ、必要なら詳しい人に相談する。私にとっては、そこまで含めて段取りです。ここは本の手順をそのまま再現した話ではなく、主体的に進めるという視点から振り返った、自分の仕事のやり方です。

空いた時間まで、用事で埋めなくていい

終章では、忙しくないと不安になる気持ちに目を向けます。著者による本書の抜粋記事では、忙しさが周囲に認められている感覚と結びつくことが取り上げられています。仕事を減らしたいと思いながら、予定が空くと落ち着かない。その矛盾も考える本なのですね。

ここまで読むと、ToDoのチェックが増えたかどうかだけを、一日の評価にしなくてもよいと思えてきます。必要な仕事が進んで、休める時間が残ったなら、それも望んでいた成果のはずです。空いた時間をすぐ次の用事で埋めていないか、私も振り返りたいところです。

付箋やメモ、腕時計が積み重なった机の片隅にある、開いた本と湯気の立つコーヒー — 忙しさの中の静かな余白

次の依頼が来たときに、一つだけ試す

本書の考え方と自分の経験を重ねると、まず試したいのは、新しい依頼を受けた瞬間に対応の順番を決め直すことです。例えば、次の三つを確かめます。これは本の手順の引用ではなく、私なりに日常へ置き換えた例です。

  • いつまでに必要か。 受け取ったばかりという理由だけで、緊急だと決めない。
  • 今の仕事より先にするか。 短く済むかだけでなく、残っている仕事の期限や重要度も見る。
  • 後で対応するなら、どこに残すか。 見返すメモに書き、覚えておくことだけに頼らない。

集中する時間を作る方法も、職種に合わせて考える必要があります。接客中や緊急の連絡を受ける役割なら、通知を全て切る方法は使いにくいでしょう。自分で調整できる範囲を探すことと、仕事量や担当の調整を相談することは、両方あってよいと思います。

『多忙感』は、タスクを片づけているのに追われている感じが残る人に、進め方を点検する視点をくれます。さらに速く働く方法を探す前に、自分で選べている部分がどこにあるかを考える。そのための一冊として、手に取ってみてほしい本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました