『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』大野萌子|感じの良さは性格ではなく「安心を渡す技術」 (2025)

『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』大野萌子 表紙 生き方・人間関係
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気を遣って話しているのに、相手の表情が硬くなる。親切のつもりで助言したのに、会話が続かない。そんなとき、何を言えばよかったのかと悩むことがあります。

『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』は、言葉の選び方から人間関係を見直す本です。著者は公認心理師・産業カウンセラーの大野萌子氏。アスコムから2025年12月に刊行されました。

軸になるのは、相手が安心できるかどうか。聞く順序、改善点の伝え方、無理な依頼への断り方まで、普段の会話で考え直せるところがあります。

相手の気持ちや選ぶ余地を大切にしながら、自分の伝えたいことも言葉にする。
本書の要点を筆者が整理

言葉に表れる「自分にとっての当たり前」

本書の出発点は、感じの悪い言葉が、悪意のない人からも出てしまうということです。言い回しだけを覚えるより、その言葉を選んだときの前提を見直すことを勧めています。

巻頭では、家事を妻の仕事だと考えたまま助けを申し出る場面が登場します。本人は親切のつもりでも、役割を一方的に決めていれば、相手には負担を押しつける言葉として届きかねません。自分も担い手だと考えれば、何を引き受けるかを具体的に伝える言葉に変わります。

ここで問われるのは、語尾を丁寧にできるかだけではありません。相手の役割や希望を、自分だけで決めていないか。会話のすれ違いを性格の問題にする前に、点検する場所を示してくれます。出版社が公開している巻頭にも、この考え方が表れています。

朝の光が差す窓辺のベンチに、畳んで置かれたブランケットとクッション

相談を聞くときは、解決を急ぐ前に気持ちを受け取る

著者は、聞き手と話し手で会話の入口を変えます。相談を聞く側なら、まず相手の感情を受け止める。自分が事情を説明する側なら、先に事実を整理して伝える。この使い分けが、本書の実用的なところです。

例えば、同僚の言葉に傷ついたと打ち明けられた場面。すぐに日時や発言内容を確かめたくなるのは、解決を手伝いたいからでしょう。それでも、つらかった気持ちが置き去りになれば、相手は十分に聞いてもらえたとは感じにくい。まず気持ちを受け取ってから、必要な確認へ進む順序を示しています。本書の抜粋(Forbes JAPAN)では、その違いを会話例で説明しています。

気持ちを受け止めることと、相手の判断すべてに賛成することは、分けて考えられます。職場で相談を受けたなら、困っていることを聞いたうえで、仕事の状況を一緒に確かめる。共感したら指摘できなくなる、という心配をせずに読める指針です。

言いにくいことほど、事実から伝える

一方、こちらからミスや問題を伝えるときは、怒りや不満を先にぶつけると、相手の関心が「何が起きたか」より「怒られたこと」に向かってしまいます。本書は、言いにくい話ほど、起きたことを端的に伝えるよう勧めています。

私も部下の仕事を確認するときは、「進捗どんな感じ?」と聞き、途中の状態を見て怒らないようにしていました。まず状況を知る。そのうえで、良いところと、もう少し工夫できそうなところを具体的に伝えていました。

この順序なら、話の焦点を作業に置きやすくなります。人柄や意欲を評価する言葉から入ると、仕事の修正より、自分への評価をめぐる会話になりかねません。何を確認したいのかを明らかにすることは、相手が説明するための助けにもなります。

ただし、本書は感情を出すこと自体を禁じてはいません。うれしい出来事を一緒に喜ぶ会話には、感情から始めてもよい場合がある。業務の報告なら、何が起きたかを先に伝える。この例外まで含めると、いつでも無機質に話せという教えではないことが分かります。本書の抜粋(ZUU online)で詳しく扱われています。

直してほしいときは、次にできる行動まで示す

感じよく伝えようとすると、改善点が曖昧にならない?

本書の言い換えは、注意を飲み込むためのものではありません。禁止する言い方を、してほしい行動が分かる言い方へ変える。例えば遅刻への注意なら、遅れないように念を押す代わりに、到着してほしい時刻を伝える。書類なら、避ける書き方だけでなく、必要な書き方を示します。

これは、声を優しくするだけの工夫より具体的です。相手が何をすればよいかを理解できる形にし、命令として押しつける響きを和らげる。本書の抜粋(ヨガジャーナルオンライン)には、こうした日常の言い換え例が載っています。

売上上位の商品の分析を部下に教えていたときも、色別、デザインやモデル別、価格帯別と、次に確かめる切り口を示していました。仕上がりが良ければ「めちゃ早いね」「Excel得意だね」と、本当に思ったことを伝える。改善点も良かった点も、何を見てそう感じたかが分かるようにしていました。

褒めたあとに曖昧な注文を足すだけでは、相手はやはり迷います。伝え方を点検するときは、受け取った人が次の一手を思い浮かべられるかまで考えたいところです。

窓辺の机の上に一つだけ置かれたガラスの砂時計

断ることと、相手を否定することを混同しない

本書で安心できるのは、誰にでも合わせ続けることを求めていない点です。断れずに引き受け続けると、負担が積み重なり、かえって関係を続けにくくなる。感じよく接することには、自分の意思を伝えることも含まれています。

その手がかりが、主語の置き方です。相手の好みをおかしいと評するのと、自分の好みには合わないと伝えるのとでは、同意しない点は同じでも、相手への届き方が違います。著者は、自分の考えや状態を伝えることと、相手そのものを否定することを区別しています。断り方を扱った本書の抜粋で、具体的に説明されています。

私も以前は、誘いを断ると付き合いが悪いと思われるのでは、と気にしていました。今は誘ってくれた気持ちに感謝しつつ、自分の都合が合わないときは無理に参加しません。余裕を持って人と会い、相手の話をしっかり聞けるようになった感覚があります。

断る際に考えたいのは、自分が引き受けられる範囲を伝えているか、それとも相手の頼み方や人格への批判になっているか。境界を示す言葉があれば、賛成できない場面でも会話を続ける余地が残ります。

一度の名台詞より、普段の一往復を変える

出版社の書籍紹介によると、本書は身近な場面の具体例や設問を通じて、話し方の土台となる考え方を身につける構成です。読みながら、自分ならどんな言葉を返すかを考えられます。

私の場合、部下と打ち解けるまでには、日々の挨拶や雑談、仕事のやり取りを重ねる時間が必要でした。次第に向こうから話しかけてくれることが増え、私生活の話やランチにもつながりました。一度の声かけだけで変わったわけではありません。

だからこそ、紹介されている言葉を使って反応が薄くても、それだけで失敗と決めなくてよいと思います。相談では気持ちを受け取れたか。指摘では事実と次の行動を示せたか。依頼には無理のない返事ができたか。日々の一往復なら、振り返る場所も具体的になります。

仕事量や役割の問題まで話し方だけで解決できるわけではありません。それでも、必要な相談や調整を始める言葉は変えられます。『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』は、相手への配慮と自分の意思を両立させたいときに、普段の会話を見直す手がかりになる一冊です。

📖 『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』大野萌子

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