『プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則』谷本理恵子|「勇者」と「プリンセス」を並べて見るマーケティング (2019)

『プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則』谷本理恵子 表紙 マーケティング
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マーケティングの世界では長らく、購買を「主人公が試練を乗り越えて成長する物語(英雄の旅)」になぞらえてきました。でもそれは、どちらかというと“男性向け”の型なのでは——そう問い直したのが本書です。著者の谷本理恵子氏は、化粧品や健康食品の通販の現場で女性向けの売り方を磨いてきたセールスライター。女性の購買心理には別の物語構造がある、という実感を「プリンセス・マーケティング」として言語化しています(2019年・エムディエヌコーポレーション)。

女性は「努力して新しい何かを手に入れる」物語より、「本来の自分を取り戻す」物語に共感する。だから訴求も、“勝ち取る”ではなく“呪いが解けて本来の姿に戻る”の形にする。それが本書の見立てです。

朝もやの丘の上に佇む古城 — 「お城」の物語で読み解くマーケティングのイメージ

「勇者」と「プリンセス」

  • 男性=勇者型——いまは弱い自分が、努力や競争を通じて力を勝ち取り、強くなっていく。評価してくれる他者(観客)がいて、お城は「これから到達する場所」。
  • 女性=プリンセス型——もともと輝く存在なのに、いまは“呪い”で仮の姿になっている。努力ではなく、運命的なきっかけで「本来の自分」を思い出す。他人の評価より自分の満足で、お城は「戻るべき場所」。
  • だから見せ方が変わる——同じ商品でも、「これで新しく生まれ変わる」ではなく「本来のあなたが、また輝きだす」。この一語の違いが効く、というわけです。

違いを、七つの原則に並べ直す

本書はこの違いを、「ストーリー」「登場人物の設定」「モチベーション」「意思決定」「何を信じるか」「関係性」「未来の見せ方」という7つの原則に分けて、男女でどう違うのかを並べていきます。自分の商品は、勝ち取る物語と取り戻す物語の、どちらの言葉で売られていますか?

現場で効く小さなコツ

  • 上得意のお客さん3人に、じっくり話を聞いてみる。3人に共通点が出れば、それは顧客全体の特性かもしれない。
  • 質問は「自社商品のいいところ」より「他社商品の“嫌だったところ”」。不満のほうが本音が出やすい。
  • 女性向けの訴求では、スペック比較より先に「使ったあとの気分・世界観」を見せてみる。

「モノ」と一緒に「時間」を買いに来る

女性のお客様の買い方には、男性客とはっきり違う特徴がありました。毎週のように「新作、入った?」と顔を出してくださり、買い物というより、雑談や情報交換そのものを楽しみに来てくださる。モノと同時に「共有する時間」を大切にされているんです。

当時、姉妹でよく来てくださるお客様がいたのですが、私が転職したあとも、ブランドを跨いで、店を跨いで会いに来てくださった。あれは商品ではなく、人と過ごす時間に価値を感じてくださっていた証拠でした。本書の言う「女性は共感で買う」を、私は売り場でずっと体感していました。売っていたのは、商品だけではなかった。

男女の二分法として読むと、窮屈になる

ひとつ補助線を引いておくと、「男はこう・女はこう」という二分法は、そのまま受け取るとステレオタイプになりがちです。実際の購買行動は、性別だけでなく商品ジャンル・関与度・その人の性格に大きく左右されます。本書も学術データで裏づけた本ではなく、著者が現場経験から立てた仮説です。なので「性別の話」としてではなく、「“戦って勝ち取る物語”に響く人と、“本来の自分を取り戻す物語”に響く人がいる」という訴求の型の話として読むと、性別を越えて使えて、二分論の窮屈さも薄まります(著者自身、恋愛や子育て、日常の伝え方にも応用できると述べています)。性別ではなく人間に共通する欲求の側から購買を読む8つの本能を軸にした整理と重ねると、二分法に寄りかからずに使えます。

朝の光が差すドレッサーに置かれたティアラと香水瓶の水彩イラスト — 自分が物語の主人公になる時間のイメージ

こんな人に

女性向けの商品やサービスを扱っていて、なぜか刺さらないと感じている作り手。コピーや見せ方の“型”を増やしたいマーケ担当の人に。

おわりに

男女どちらが上、という話ではありません。「相手がいま共感している物語は何か」——それを考える一点に立てるだけで、言葉の選び方が変わってきます。売り方に迷ったとき、引き出しをひとつ増やしてくれる本でした。

📖 『プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則』 谷本理恵子

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