小山竜央(こやま・たつお)は、ベストセラー作家・経営者向けセミナー講師。海外マーケティング理論の輸入と、日本市場向けの再構築で知られる。本書(2021/角川マガジンズ)は、米国マーケティング理論(Jay Abraham、Dan Kennedy、Jay Conrad Levinsonら)の主要概念を、日本の中小企業オーナー向けに体系化した実用書。”非常識“とは、業界の慣行ではなく顧客から逆算する発想を指す。
“頑張って売る“のではなく、”売れる仕組みを作る“——マーケティングの本質は、努力の方向を変えること。
本書の構成と、章ごとのポイント
第1章 マーケティングと営業の違い
- 営業=売る活動、マーケティング=売らなくても買われる仕組みづくり。Peter Druckerの古典的定義に近い。
- 多くの中小企業は営業ばかりで、マーケティングの設計をしていない——という診断から始まる。
第2章 ペルソナを描く
- “顧客の顔がぼんやり“だと、メッセージもぼんやりする。具体的な1人(ペルソナ)を設定する重要性。
- 年齢・性別・年収だけでなく、悩み・夢・1日の過ごし方まで描く。
第3章 USP(独自の売り)を作る
- Jay Abrahamの古典的概念。“なぜ他社ではなくあなたから買うべきか”を、20秒で説明できるか。
- これが言語化できない事業は、価格競争に巻き込まれる。
第4章 LTV(顧客生涯価値)で考える
- 1回の取引ではなく、顧客が生涯にいくら使うかで設計する。新規獲得コストとLTVのバランスがすべての出発点。
- 米国のサブスクビジネスは、この計算で経営が回っている。
第5章 リスクリバーサル(保証)で背中を押す
- “全額返金保証“は、購入の心理的バリアを下げる強力な装置。Jay Abrahamが繰り返し推す古典手法。
- 大手通販・SaaS・教育サービスでもこの仕組みが採用されている。
第6章 リスト構築とフォロー
- “The money is in the list“(リストにお金がある)というアメリカマーケティングの格言。
- メルマガ・LINE公式・LinkedIn——プラットフォームが変わっても、リスト構築という考え方は普遍。
世界のマーケティング論との位置づけ
本書のベースには、Jay Abraham『Getting Everything You Can Out of All You’ve Got』、Dan Kennedy『No B.S. Marketing to the Affluent』、Jay Conrad Levinson『Guerrilla Marketing』、Seth Godin『Permission Marketing』など、米国マーケティング古典の影響が見える。これらの英語圏古典を、現代日本の中小企業向けに翻訳した実用書として読むのが正解。
YouTubeで「Jay Abraham marketing」「Seth Godin TED」と検索すると、世界トップクラスのマーケターの講演が無料で観られる。本書を読んだ後、これら英語動画に進むと、本書の主張がどの古典に基づくか分かる。
明日からの3つの実装
1. “理想の顧客1人”を、紙に描いてみる
性別・年齢・職業・年収・悩み・夢——一枚の紙に書き出す。これだけで、メッセージの解像度が劇的に上がる。
2. USP(独自の売り)を、20秒で言えるようにする
“なぜ他社ではなくあなたから買うべきか”——一文で答える。言えなければ、まず差別化の設計が必要。
3. 顧客のLTVを、計算してみる
1人の顧客が、生涯にいくら払ってくれるか。これが新規獲得コストの上限になる。知らないまま広告を出すと、必ず赤字になる。
関連書と、読む順番
- 本書(まず日本向けの全体感)
- 『ハイパワー・マーケティング』Jay Abraham(古典)
- 『現代広告の心理技術101』Drew Eric Whitman(コピーライティング)
- 『不変のマーケティング』神田昌典(日本的応用)
読むときに、気をつけたい点
本書は中小企業オーナー・個人事業主を主な読者にしている。大企業のブランド戦略や、テック企業のグロース・ハッキングとは、扱う規模・スピード・予算が違う。“自分の事業に翻訳する”作業が読後の本番。
こんな人に合いそう
- 小さな事業を始めたばかりで、集客に悩んでいる人
- 頑張っているのに売上が伸びない店舗・サービス業のオーナー
- 米国マーケティング古典を、日本の現実に落とし込みたい人
おわりに
マーケティングは、テクニックではなく“顧客から逆算する思考”。本書はその思考訓練の入口。一度読んで実践し、半年後に読み返すと、自分の事業の見え方が変わる。手元に置いておきたい実用書。



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