津川友介(つがわ・ゆうすけ)は、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)准教授・医療政策学者。ハーバード公衆衛生大学院でPhDを取得した、米国でアクティブに研究を続ける数少ない日本人研究者の一人。本書(2018/東洋経済新報社)は40万部超のロングセラー。「専門家の合意に基づく食事」を、メディアの食ニュースに翻弄される一般読者向けに整理した一冊。
“個別の栄養素“ではなく、”食品そのもの“で議論する——これだけで、巷の健康情報の9割は雑音になる。
本書の構成と、章ごとのポイント
第1章 健康情報のだまされ方
- テレビ・雑誌・ネット記事は、エビデンスの強い知見と弱い知見を同列で扱う。読者は両方を「最新の研究」として受け取ってしまう。
- “観察研究“と”ランダム化比較試験“の差を、読者にわかりやすく解説する章。
第2章 健康に良い食品 5つ
- 魚 / 野菜と果物 / 茶色い炭水化物(全粒粉・玄米) / オリーブオイル / ナッツ——津川がエビデンス強と分類する5つ。
- これらを「組み合わせて取る」のが、地中海食・DASH食の共通項。
第3章 健康に悪い食品 3つ
- 赤い肉(牛肉・豚肉) / 加工肉(ハム・ソーセージ) / 白い炭水化物(白米・白パン)——WHOやAHA(米心臓協会)も推奨と一致する分類。
- 「絶対に食べるな」ではなく「頻度を下げよ」がメッセージ。
第4章 グレーゾーンの食品
- 卵・乳製品・コーヒー・チョコレート・酒・大豆——エビデンスが割れている、または個人差が大きい食品群。
- 「白黒つけない」のも、誠実な科学的態度。
第5章 子ども・高齢者・妊婦の食事
- ライフステージで必要な栄養は変わる。“万人に効く食事”はない。
- 個別最適化の指針を、平易にまとめる章。
世界の同テーマと並べてみる
本書は、Walter Willett『Eat, Drink, and Be Healthy』(ハーバード公衆衛生大学院、地中海食の世界的権威)、David Katz『How to Eat』、Michael Pollan『In Defense of Food』(『Eat food. Not too much. Mostly plants.』の名言で知られる)などと地続き。津川は米国の研究者として、これら英語圏の知見を日本人読者向けに翻訳した稀少な存在。
YouTubeで「Walter Willett TED」「Stanford Christopher Gardner diet」と検索すると、英語圏の食事エビデンスの最前線が観られる。本書を読んだ後、これら動画に進むと、世界の食事ガイドラインがどう議論されているか分かる。
明日からの3つの実装
1. 朝の白パンを、茶色いパン(全粒粉)に置き換える
本書が最初の小さな改善として推す。白い炭水化物を減らすだけで、長期的な糖尿病・心血管疾患リスクが下がるエビデンスがある。
2. 週に魚を2-3回食べる
地中海食の最重要要素。サバ・サンマ・サーモンなどオメガ3が豊富な魚を、調理が簡単な缶詰でも構わない。
3. 健康情報を見たら、“観察研究かRCTか”を確認する癖
本書を読んだ後にネットの健康情報を見ると、「これは弱いエビデンスだ」と分かるようになる。情報のリテラシーが上がる。
関連書と、読む順番
- 本書(まず日本人向け入門)
- 『最高の体調』鈴木祐(健康全般のエビデンス)
- 『Eat, Drink, and Be Healthy』Walter Willett(本格的な世界基準)
- 『How Not to Die』Michael Greger(別の角度から)
読むときに、気をつけたい点
本書は2018年時点のエビデンス。栄養疫学は日々更新されているので、最新情報は津川のSNS・Yahoo!ニュース個人配信・米国保健機関のガイドラインも併せて確認したい。“絶対的な正解”として鵜呑みにせず、自分の生活に合わせて翻訳して使う。
こんな人に合いそう
- 「健康にいい食事」が分からなくなっている人
- テレビ・ネットの健康情報に振り回されて疲れた人
- 家族の食事を作る立場で、何を優先すべきか迷う人
おわりに
派手な提案はない。“魚と野菜と全粒粉を、量より頻度で”。それだけが、エビデンスが繰り返し示す結論。台所に置いて、献立を考える時に開きたい一冊。



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