『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』津川友介|体にいい食べ物・避けたい食べ物 (2018)

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』津川友介 書影 健康
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『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は、「結局、何を食べれば体にいいのか」という、誰もが抱く疑問に、まっすぐ答えようとした本です。著者の津川友介氏は、医師であり、医療政策を研究する専門家。世の中にあふれる健康情報の多くが、じつは根拠の弱いものだと指摘し、「信頼できる科学的根拠(エビデンス)があるものだけ」を、選り分けて示してくれます。

健康によい食べ物の話は、毎日のように、テレビやネットを賑わせます。けれど、その多くは、「体に良さそう」という印象や、一つの研究の切り取りにすぎないことも少なくありません。本書のすごさは、そうした情報の洪水のなかで、「本当に証明されていること」と「そうでないこと」を、はっきり線引きしてくれるところにあります。いわば、健康情報に振り回されないための、一冊のものさしです。いま冷蔵庫にあるもののうち、「良い5つ」に入るのはいくつありますか?

「体に良さそう」という印象に、振り回されてはいけない。
本当に信頼できるのは、複数の質の高い研究で「証明された」食品だけだ。

著者と本の立ち位置

著者の津川友介氏は、医師として臨床を経験したのち、アメリカの大学で、医療政策や健康に関するデータを研究してきた人物です。「印象」や「権威」ではなく、「データが、実際に何を示しているか」を、何より重んじる立場の研究者です。

だから本書は、「私はこう思う」という個人の意見の本ではありません。世界中で行われた、信頼性の高い研究を踏まえて、「これは健康に良いと証明された」「これは悪いと証明された」と、根拠を示しながら語っていく。健康の本にありがちな、あいまいさや勢いがなく、静かで、誠実な手ざわりがあります。

「印象」ではなく「エビデンス」で選ぶ

本書の根っこにあるのが、「エビデンス(科学的根拠)で判断する」という姿勢です。世にあふれる健康情報の多くは、根拠があいまいだったり、たった一つの実験を、大げさに伝えたものだったりします。本書が採用するのは、そのなかでも、信頼性の高い研究——たとえば、多くの人を対象にした比較試験や、複数の研究をまとめて分析したもの——で、くり返し確かめられたことだけです。一つの実験は、まだ結論ではない。

食卓に並ぶ単位で、良し悪しを語る

もう一つ大切なのが、判断の単位を、「成分」ではなく「食品」に置くことです。「この成分が体にいい」と言われても、その成分を含む食品全体が、健康に良いとは限りません。だから本書は、「ある栄養素が」ではなく、「野菜そのものが」というように、私たちが実際に口にする「食品」のレベルで、良し悪しを語ります。これが、いますぐ食卓で使える、実用性につながっています。

木のまな板に並ぶ青菜・玄米・魚。研究で確かめられた食品を食卓の単位で選ぶイメージ

体に良い「5つ」と、悪い「3つ」

本書が、信頼できる研究にもとづいて「健康に良い」と結論づける食品は、大きく五つです。魚、野菜と果物(果物ジュースやじゃがいもは除く)、茶色い炭水化物(玄米や全粒粉など、精製されていないもの)、オリーブオイル、そしてナッツ類。

赤い肉、白い炭水化物、飽和脂肪酸

逆に、「健康に悪い」とされるのが、三つ。赤い肉(牛肉や豚肉、とくにハムやソーセージなどの加工肉)、白い炭水化物(白米や白いパンなど、精製されたもの)、そして、バターなどに含まれる飽和脂肪酸です。覚えることは、たったこれだけ。あれこれの細かい栄養素を気にする前に、この「良い5つ・悪い3つ」を意識するだけで、食事の質は、大きく底上げされます。

朝の光の差す台所のまな板に、オリーブオイルのガラス瓶と殻付きのくるみ。体に良い食品を選ぶシンプルな基準のイメージ

神経質にならない範囲で、変えたこと

私自身は、食事にそこまで神経質になっているわけではありません。ただ、この手のエビデンスを知ってから、いくつか具体的に変わりました。赤身の肉は消化の負担になりやすいと知って、ささみや胸肉など白系の肉を選ぶことが増えました。砂糖の入った飲料も極力控えて、炭酸ジュースはほぼ飲まなくなった。

主食も変えました。いまは玄米が中心です。完全な玄米だと私には重く感じるので、ほんの少しだけ精米して、消化しやすくしたものを食べています。本書が「白い炭水化物」を避けるよう勧める箇所に、いちばん素直に従えたのがここでした。サラダの量も、意識して多めにとるようにしています。

もう一つは、量よりも素材に寄せたことです。安さで選ぶのをやめて、なるべく素材の良いものに投資する。品数を増やすより、こちらのほうが満足度は高いと感じています。食べる時間も変わりました。朝はそれほど食べません。もともと朝はさほどお腹が空かないので、飲み物と果物くらいで済ませて、昼と夜をメインにしています。胃を休める時間があるほうが、私には合っているようです。もっとも、このあたりは人によると思うので、万人向けの正解として書くつもりはありません。

とはいえ甘いものは好きなので、甘酒を炭酸水で割ったり、ジンジャーシロップを炭酸で楽しんだり、自然な甘味に置き換える工夫をしています。カフェインも眠りに響くので、とるなら明るい時間だけ。どこまで直接の効果かは分かりませんが、毎年の測定で体内年齢が実年齢よりずいぶん若く出るので、この「ゆるく根拠に寄せる」くらいの付き合い方でも、それなりに意味はあるのだと思っています。

明日から試せること

  • いつも食べている「白い炭水化物」を、ひとつだけ「茶色い炭水化物」に替えてみる。白米を玄米に、白いパンを全粒粉のパンに。
  • ハムやソーセージなどの加工肉を口にする回数を、少しだけ減らしてみる。毎日から、週に数回へ。
  • 小腹がすいたときの間食を、お菓子から、素焼きのナッツに替えてみる。

順番として、いきなり完璧をめざさないこと。まず一つ、続けられる習慣から。「良い5つ」を少し増やし、「悪い3つ」を少し減らす。その小さな置き換えの積み重ねが、無理なく続く健康の土台になります。

「平均の傾向」であって、万人の正解ではない

引っかかるとすれば、本書が語るのは、あくまで「大勢の人を平均して見たときの傾向」だ、という点です。体質やアレルギー、持病などによって、最適な食事は、人それぞれ変わります。気になることがあれば、自己判断で突き進まず、医師や専門家に相談するのが安全です。

結論は、研究とともに更新される

また、栄養学の知見は、新しい研究によって、少しずつ更新されていきます。本書の結論も、未来永劫の絶対ではありません。だからこそ、極端に振り切るのではなく、「いまわかっている、確からしいこと」を、ゆるやかに取り入れるのが、賢い付き合い方です。食べる楽しみまで犠牲にしては、本末転倒。神経質になりすぎず、大きな方向だけ押さえる——それくらいの構えが、ちょうどいいと思います。

こんな人に効きそうか

次々と流れてくる健康情報に、何を信じればいいのか分からなくなっている人。「体にいい」と聞いては試し、続かずに疲れてしまった人。そんな読者に必要なのは、「これだけ押さえておけばいい」という、シンプルで確かな基準です。

栄養学を最先端まで深く学びたい人には、物足りません。本書が引き受けるのは、迷わないための最小限の原則までです。これは、専門的な網羅性よりも、「忙しい毎日のなかで、迷わず使える、信頼できるものさし」を、手渡すための本だからです。

読み終えて

明るい昼の光の食卓に、麻のマットと粉引きの飯茶碗に盛られた玄米。茶色い炭水化物に置き換える健やかな一食のイメージ

健康の情報は洪水のようにあふれている——それでも効くのは、確かな少数の原則だけ。読み終えて、そんな像が残りました。あれもこれもと、健康情報を追いかけて疲れる必要は、もうありません。良い5つを、少し増やす。悪い3つを、少し減らす。それだけを、長く続けるほうが、ずっと体に効きます。完璧な食事より、続けられる置き換えをひとつ。私はそれで十分だと感じています。

まずは、次の一食で、白い炭水化物を、ひとつだけ茶色いものに替えてみる。その小さな置き換えから、情報に振り回されない、落ち着いた食生活が始まります。

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