『幸せにならなくたっていいんだよ』ひすいこたろう|「幸せにならなきゃ」という思い込みをほどく物語 (2025)

『幸せにならなくたっていいんだよ』ひすいこたろう 表紙 生き方・人間関係
この記事は約6分で読めます。

人前でうまく話せなかった。準備したはずなのに、また緊張してしまった。

そんな日の反省が、いつのまにか「自分はだめだ」という評価にまで広がってしまうことがあります。改善したいところはある。でも、それが直るまで自分を認めてはいけないのでしょうか。

ひすいこたろう氏の『幸せにならなくたっていいんだよ』は、幸せを遠ざけている思い込みを見つめ直す一冊です。

銀河の執事「虎タロウ」がラジオ局からメッセージを届ける、という物語仕立てで進みます。

正解を教わるというより、自分に課していた条件に気づくような読み心地でした。

「こうでなければ」と思っていた条件をゆるめ、今の自分と暮らしを見直してみる。

本書の趣旨を私なりに要約

幸せになるための条件を、増やしていないか

出版社の紹介と目次を見ると、本書が扱うのは、嫌われてはいけない、人に頼ってはいけない、といった思い込みです。

他人が決めた幸せの基準に合わせようとして、今の自分を足りない存在にしていないか。題名は、その問いへの入口だと思います。構成は四つの幕に分かれています。

自分自身から人との関わりへ、さらに思い込みそのものへと、視点が広がっていきます。

  • ME/私の幸せ:自分に向けている厳しい条件を見つめる。
  • WE/私たちの幸せ:人に頼ることや、人との関係を考える。
  • REMEMBER/思いだせ:自信や思い込みとの付き合い方を問い直す。
  • TEN/10年後の思い出の木:最後は未来へ目を向ける。

私が立ち止まったのは、弱みや自信のなさを扱う項目でした。

苦手が一つあると、それを克服してからでなければ前へ進めない気がする。でも、人前で緊張する自分と長く付き合ってきた経験を振り返ると、変えられる部分と、すぐには変わらない部分の両方がありました。

本書の主張① 現実をつくっているのは「思考」ではなく「思い込み」

プロローグの表題が、そのまま本書の前提になっています。

思考は現実化しない、「思い込み」が現実化する、と。版元の紹介文はこう説明します。

私たちは幸せになりたいと願いながら、その過程でいつのまにか「自分は幸せではない」と思い込み、自分ではない誰かが決めた幸せの基準に縛られている。

99パーセントの幸せはすでに身近にあるのに、残り1パーセントの不幸ばかりに目を向けてしまう、と。

だから本書がやろうとしているのは、幸せを足すことではなく、幸せを見えなくしている思い込みを外すことです。(出典:ディスカヴァー・トゥエンティワンの書籍紹介ページ)

本書の主張② 外すべき思い込みは、名指しでリストになっている

版元が挙げているのは、「嫌われてはいけない」「いい人でなければいけない」「人に頼ってはいけない」「迷惑をかけてはいけない」「恥をかいてはいけない」「わがままを言ってはいけない」、そして「幸せでなければならない」の7つです。

最後の一つが効いています。幸せを義務にした時点で、それは達成できていない状態を数える装置に変わってしまう。本書のタイトルが「幸せにならなくたっていい」である理由も、ここにあります。

本書の主張③ 「いつか幸せになりたい」の、そのいつかは来ない

1幕「ME 私の幸せ」には12の項目が並びます。

「自分は幸せじゃない」は思い込みだ、というところから始まり、「幸せになりたい」は9割かん違いだ、と続く。そのうえで、いつか幸せになりたいと言い続けるかぎり、そのいつかは永遠に来ない、と畳みかけます。

休んだ人からうまくいく、失敗しないと人生を失敗する、笑えない日はけっこうあっていい——並んでいる項目は、条件を満たしにいこうとする方向とは、そろって逆を向いています。

2幕と3幕で、自立の定義がひっくり返る

2幕「WE 私たちの幸せ」で目を引くのは、自立とはたくさんの人に依存することだ、という項目です。

人に頼ってはいけないという思い込みへの、正面からの答えになっています。続く「問題は解決するために起きているのではない」「ゆるさないまま幸せになればいい」も、解決や和解を前提に置かない立て方です。

3幕「REMEMBER 思いだせ」では、自分を信じられないままでいいという話を経て、最後に「思い込みは敵じゃなかった」という反転が置かれ、総括で思い込みの正体が語られます。

敵として外すのではなく、正体を見てから付き合い直す、という順序です。

著者はどんな人か——「幸せの翻訳家」

ひすいこたろう氏の肩書きは、作家・幸せの翻訳家・天才コピーライターです。

モットーは「視点が変われば人生が変わる」。衛藤信之氏から心理学を学び、心理カウンセラーの資格を取得しています。

2005年の『3秒でハッピーになる名言セラピー』がディスカヴァーMESSAGE BOOK大賞で特別賞を受け、そこからベストセラーが続きました。

版元によれば著書累計300万部、YouTube『名言セラピー』の登録者数は74.6万人。

短い言葉で視点を反転させることを20年やってきた人の本、と考えると腑に落ちます。思い込みを「解除する」という言い回しが出てくるのも、コピーライター的な発想の延長に見えます。

4幕と総括——最後に何が置かれているか

本書は3幕では終わりません。

3幕「REMEMBER 思いだせ」の終盤に総括が2つ置かれ、1つ目で「思い込み」の正体が語られます。敵として排除するのではなく、正体を見てから付き合い直す、という順序です。

2つ目の総括は、本書の舞台になっている「今夜オリオンで逢いましょう」を始めた理由。そして本を閉じるのは、4幕「TEN 10年後の思い出の木」です。

19の「真実」を並べ終えたあとに、もう一章分の余白が用意されています。

この本を読むとどうなるか

形式そのものが読み方を決めています。

銀河の彼方オリオン座にあるレディオ・ステーションから、YouTube『名言セラピー』でおなじみの銀河の執事・虎タロウがDJとして語りかけてくる。

理屈で説き伏せる本ではなく、夜に一つずつ聴くようにページをめくる本です。読み終えて増えるのは幸せの条件ではなく、その条件のほうを疑う視点。

ディスカヴァー・トゥエンティワンから2025年10月24日刊、2,090円(税込)。

以下は、この主張を自分の経験に当てはめてみた記録です。

窓辺の机の上でゆるくほどけかけた麻紐の結び目と、そばに置かれた白紙のカード

自分の採点と、相手の感想は違っていた

「弱みはステキな芸風になる」という項目を、私は自分の緊張しやすさに重ねて読みました。

以前、友人の結婚式でスピーチを頼まれたことがあります。構成は考えていたのに、本番では早口になり、話を飛ばした感覚が残りました。落ち着いて話せた手応えは、まったくありません。

ところが後から、友人には「すごくスムーズに話せていたね」「話し慣れているね」と言われたのです。お世辞もあったでしょう。

それでも、自分の採点と相手の受け取りはここまで違うのか、と思いました。

第1幕にはもう一つ、最後に問われるのは「言葉」より「心」という項目があります。あのとき届けたかったのは、新郎の真面目さと、二人を祝いたい気持ちでした。

話し方の出来という一点だけで、引き受けた意味まで消えるわけではない。

本書の言う思い込みの解除は、私にはこういう形で効きました。念のため書いておくと、開き直って改善をやめる話ではありません。準備を見直すことと、自分の性格を責め続けることは、分けて考えられるはずです。

夕暮れの窓辺のサイドテーブルに灯る小さなランプと、閉じた本と湯呑

物語の言葉を、現実に合わせて読む

本書の幻想的な舞台や、思い込みをめぐる大胆な表現は、好みが分かれると思います。

気持ちの持ち方で現実の問題が全て解決する、と読む必要はありません。つらい出来事や生活上の困難まで、本人の思い込みのせいにしたくはないからです。

具体的な話し方や緊張への対処法を詳しく学ぶ本としては、別の本が必要でしょう。

この一冊に求めたいのは、改善点を探す目ばかりになっているとき、自分に向ける言葉を見直す時間です。

気になる項目を一つずつ読むくらいが、私には合っています。

反省の横に、残しておきたいことも書く

もし何かがうまくいかなかった夜に読むなら、反省点の横に、その場で大切にしたかったことを一つ書いてみるのはどうでしょう。

これは、本を読んで私が考えた振り返り方です。スピーチなら、早口になったという反省の横に、友人の人柄を紹介し、お二人を祝いたかった気持ちも残す。

直すべきところはあっても、その経験の全てが失敗だったとは限りません。

『幸せにならなくたっていいんだよ』は、自分に厳しくなりすぎたとき、その見落としを考えるために開きたい本です。

📖 『幸せにならなくたっていいんだよ』ひすいこたろう

📕 Amazonで詳細を見る 🛍 楽天で詳細を見る

コメント

タイトルとURLをコピーしました