『サイコロジー・オブ・マネー』 お金の behavior を知ると、投資はもっとラクになる

サイコロジー・オブ・マネー 書評

この本を読んだのは、資産が増えてきて「次にやるべきこと」に少し迷っていた頃でした。

『サイコロジー・オブ・マネー』は、いわゆる「投資の技術書」ではありません。株の買い方も、ポートフォリオの組み方も、ほとんど出てきません。代わりに書かれているのは、お金に対して人がどう感じ、どう判断を間違えるかという話です。

読み終わって思ったのは、投資で一番大事なのは銘柄選びじゃなくて、自分の感情とどう付き合うか、ということ。アパレル販売員時代に散財していた自分にも、もっと早く読ませたかった一冊です。

「合理的」より「納得できる」でいい

本書のなかで印象的だったのが、この一節です。

「合理的(rational)であろうとしなくていい。納得できる(reasonable)レベルを目指せばいい」

投資の本を読むと、だいたい「感情を排除してロジックで動け」と書いてあります。でも現実には、暴落のときに平然としていられる人なんてほとんどいない。

私も2020年のコロナショックや、2022年の下落のときは、口座を開くのがちょっと怖かった。でも「積立設定だけは止めない」という納得感のある落としどころを決めていたので、続けられました。理論的に最適じゃなくていい、続けられる形であることのほうが大事なんです。

お金の本当の価値は「自由」

本書で一番、生き方に影響を受けたのはこの考え方でした。

「お金が与えてくれる最高の配当は、自分の時間をコントロールできることだ」

資産を増やす目的が、高い車でもブランド物でもなく、「朝、何時に起きるかを自分で決められること」だとしたら、景色がガラッと変わります。

私がアパレルの販売員からフリーランスになれたのも、積立NISAでコツコツ積み上げた資産が心の余白をくれたからです。「最悪、数ヶ月無収入でも大丈夫」というラインが見えていたから、一歩踏み出せた。お金は、選択肢を買うためのチケットなんだと、この本で腹落ちしました。

富は「目に見えないもの」

「高級車に乗っている人を見ても、富を持っているとは限らない。本当の富は、使わずに残している部分にある」

アパレルで働いていた頃、私自身、給料が入るたびに服を買うのが当たり前でした。スタッフ割引で新作をまとめて買って、クローゼットはどんどん膨らんでいく。周りから見れば「おしゃれな人」に見えていたかもしれません。でも実際は、通帳の残高はいつも似たようなラインを行ったり来たりしていました。

見えているお金と、残っているお金は別物。本当の富は、銀行口座や証券口座の中、つまり「使わなかった分」にしかない。この当たり前のことを、本書は何度も丁寧に思い出させてくれます。見栄を張るためのお金と、自分を守るためのお金は、そもそも役割が違う。投資初心者のうちに刷り込んでおいて損はない感覚だと思います。

「テールイベント」がすべてを決める

本書のキーワードのひとつが「テール(tail)」。ごく少数の出来事が、リターン全体の大半を生むという話です。

たとえばS&P500の長期リターンも、特定の数日を逃しただけで大きく目減りする。だから「市場にいる時間」がすべてというのは、格言じゃなくて統計的な事実なんです。

積立投資をしていると、ニュースを見てつい売りたくなる瞬間があります。でも「そのタイミングで一番のテールを踏むかもしれない」と思うと、手が止まる。何もしないことが、いちばん賢い選択であることが多い。これは初心者のうちに叩き込んでおきたい感覚です。

「足るを知る」ができないと、どこまで行っても不幸

「ゴールポストを動かし続ける人は、一生満たされない」

SNSで誰かの含み益を見ると、つい「自分はまだまだだ」と思ってしまう。でも比べる相手は他人じゃなくて、去年の自分でいい。この本は、そう言い切ってくれます。

7年前、33,333円の積立設定をした日の自分から見れば、今の資産は十分すぎるくらい。ゴールを動かさないことも、資産形成のスキルの一部なんだと思います。

投資初心者にこそ読んでほしい理由

投資を始めると、つい「利回り」「手法」「銘柄」の話ばかり追いかけたくなります。でも実際に7年続けてみて思うのは、勝ち負けを分けるのは知識量じゃなくて、続けられるメンタルの形だということ。

この本は、そのメンタルの「型」を教えてくれます。読んだあと、チャートを見る回数が減る。ニュースに振り回されなくなる。お金の話で他人と張り合わなくなる。それだけで、投資の成績はたぶん底上げされます。

派手なテクニック本はたくさんありますが、最初の一冊は、地味でいい。そう思わせてくれた本でした。

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