Nick Maggiulliは米国Ritholtz Wealth Management(Josh Brown率いる著名な独立系運用会社)のCOO・データサイエンティスト。データ分析ブログ『Of Dollars And Data』はMorning Brew、Bloomberg、Wall Street Journalで頻繁に引用される投資ブログ界の代表格。本書(2022/原書、邦訳2023/ダイヤモンド社)は、Goodreads星4.4、Amazon US投資カテゴリでロングセラー。”感情ではなくデータで投資する“姿勢を貫いた、現代の投資古典になりつつある一冊。
市場のタイミングは取れません。だから、「ただ買い続けろ(Just Keep Buying)」——タイトル自体が、本書の結論です。

本書の構成と、章ごとのポイント
Part 1 貯蓄編
- 貯蓄率は感情の問題: 「いくら貯めるべきか」より「無理なく貯められる率はどれか」を見つけることが先です。
- 多くの人は若いうちに貯蓄を頑張りすぎて、自分を苦しめてしまいます。所得とともに貯蓄も増やすほうが、人生の総満足度は高くなります。
Part 2 投資編
- ドルコスト平均法は、なぜ実際の最適解か: 一括投資のほうが期待リターンは高いものの、感情的に続かなければ意味がありません。データで「DCAが実際に勝つ場面」を示します。
- 暴落は買い場: 過去100年のS&P500データから、暴落直後の3〜5年リターンが高いことを統計で示します。
- 個別株は捨てろ: 全米株式の上位4%の銘柄が、市場全体のリターンを生んでいます(Hendrik Bessembinder, 2018研究)。当てる確率は、宝くじレベルです。
Part 3 ライフプラン編
- 家を買うべきか、賃貸か。感情的な判断と、財務的な判断は別物です。両方を整理してから選びましょう。
- FIREの罠: 早期退職そのものは目的ではなく、自由な時間と仕事を両立する手段です。
世界の投資論との位置づけ
本書は、『敗者のゲーム』(Charles Ellis)や『The Little Book of Common Sense Investing』(John Bogle)の、現代版データドリブン後継者といえます。Bogleheadsコミュニティで頻繁に推薦され、Ramit Sethi、Andrew Hallam、Morgan Houselなどとも親和性が高い一冊です。Goodreadsの低評価レビューでも、「過激な主張は何もないが、それがいい」というトーンが目立ちます。
YouTubeで「Nick Maggiulli」「Of Dollars And Data」と検索すると、本人による解説動画、Tim Ferriss Show、Animal Spirits Podcast(本人が共同ホスト)などが豊富に見つかります。データのグラフを目で見ながら学べる、優秀な副読教材です。
明日からの3つの実装
1. 自動積立を、給与日の翌日に設定する
感情を入れない仕組み化こそ、本書最大のメッセージです。“買い続ける”を意思に頼らない。新NISAのつみたて投資枠を活用するのが、現代日本での実装になります。
2. ポートフォリオを、“全世界株+少しの債券+少しの現金”に簡素化する
個別株・テーマ型ETF・新興国偏重——複雑にすればするほど、本書のデータ上はリターンが下がる傾向があります。シンプルさに勝るものはありません。
3. 暴落時の行動ルールを、平静な今のうちに紙に書く
「-20%でも売らない / -30%で買い増す」のように、ルールを文字にしておきましょう。暴落時の自分の判断は信用しない——これが本書の核心です。
関連書と読む順番
- 本書(現代版データドリブン投資論)
- 『敗者のゲーム』Charles Ellis(古典)
- 『The Psychology of Money』Morgan Housel(感情面の補強)
- 『THE ALGEBRA OF WEALTH』Scott Galloway(現代の資産哲学)
読むときに、気をつけたい点
本書は、米国市場(S&P500・全米株)中心のデータが前提です。日本人読者は為替リスク・新NISA制度・日本の不動産事情を、別途考える必要があります。「全世界株オルカン」「JEPI/SCHDなど海外ETF」など、自分の制度に合わせて翻訳しながら読みたいところです。
こんな人に合いそう
- 投資を始めたが、市場のタイミングを取ろうとして疲れている人
- 個別株・FXで損を出して、本格的にインデックスに移りたい人
- “感情の側面“を理解しつつ、データで武装したい人
おわりに

「ただ買い続けろ」というシンプルな結論を、200ページ以上のデータと議論で裏づける一冊です。“なぜそうすべきか”を理屈で納得したい人に、強くフィットします。机の引き出しに常備して、相場が荒れたときに開きたい本です。
📖 『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』 ニック・マジューリ



コメント