『脳を最適化すれば能力は2倍になる』樺沢紫苑|脳科学で仕事の精度と速度を上げる方法 (2016)

『脳を最適化すれば能力は2倍になる』樺沢紫苑 表紙 学び・自己成長
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『脳を最適化すれば能力は2倍になる』は、やる気や集中力を「気合い」や「性格」の問題にしない本です。精神科医の樺沢紫苑氏が、私たちの能力を左右している7つの脳内物質に注目し、それぞれをうまく出すための具体的な働き方に落とし込んでいます。仕事の精度と速度を、脳科学の側から底上げしようという一冊です。

面白いのは、「やる気が出ない」「集中できない」を、心の弱さではなく、脳内物質の不足や使い方の問題として捉え直すところです。仕組みがわかれば、感情や状態は、ある程度こちらから引き出せる。根性論から降りられるだけでも、ずいぶん気がラクになります。七つのうち、いま自分に足りていないのはどれだと思いますか?

テニスを長く続けてきた実感として、体を動かした日は頭の切り替えが早く、気分も安定します。ドーパミンやセロトニンの章を読むと、あの感覚にきちんと説明がつきます。

やる気も集中も、根性ではなく脳内物質の働きでできている。
仕組みを知れば、感情は「出し方」を選べるようになる。

著者と本の立ち位置

著者の樺沢紫苑氏は、精神科医でありながら、年に何冊もの本を書き、SNSや動画でも精力的に発信を続けている人です。『アウトプット大全』『神・時間術』など、脳科学や心理学の知見を、誰でも実践できる行動にまで翻訳するのが得意な書き手として知られています。

本書もその路線の代表作で、専門的な脳内物質の話を、「では仕事でどう使うか」という日常のレベルまで丁寧に降ろしてくれます。脳科学の入門としても、働き方の本としても読める、二刀流の一冊です。

7つの脳内物質を、ざっと見渡す

本書は、仕事の能力に関わる7つの脳内物質を、ひとつずつ章にして解説します。まずは顔ぶれを眺めてみましょう。

  • ドーパミン やる気と幸福感の物質。目標と報酬でモチベーションを生む
  • ノルアドレナリン 「恐怖」と「プレッシャー」で集中力を一気に上げる
  • アドレナリン 「興奮」と「怒り」を、ここぞの力に変える
  • セロトニン 「癒やし」の物質。朝の頭と平常心をつくる
  • メラトニン 「睡眠」の物質。深く眠り、回復する
  • アセチルコリン 記憶とひらめきを支え、集中の入り口をつくる
  • エンドルフィン 「脳内麻薬」とも呼ばれる多幸感。究極の集中を生む

攻めの三つ、守りの二つ、ひらめきの二つ

並べてみると、攻めの物質(ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン)と、守りの物質(セロトニン・メラトニン)、そしてひらめきと多幸感(アセチルコリン・エンドルフィン)に分かれているのが見えてきます。一日のなかで、どの物質をいつ使うかという話に読めました。

作業台に置かれた石の乳鉢と乳棒。脳内物質の配合を設計するイメージ

いくつかを、もう少し深く

全部は紹介しきれないので、とくに日常で効く三つだけ。

少し背伸びすれば届く目標を、小刻みに置く

ひとつめはドーパミンです。目標を立てて達成し、自分にごほうびを与えると分泌され、またやる気が湧く——この「報酬サイクル」を意識的に回すのがコツです。大きすぎる目標ではなく、少し背伸びすれば届く目標を小刻みに設定する。達成のたびに脳が「もっとやりたい」と感じるよう、自分を乗せていくわけです。

朝の数十分が、一日の土台になる

ふたつめはセロトニン。朝に太陽の光を浴び、軽いリズム運動(散歩など)をすると活性化し、頭がすっきりして気分も安定します。だからこそ本書は「朝の使い方」を重視します。セロトニンが不足すると気分が落ち込みやすくなる。朝の数十分が一日の土台になる、というのは脳科学的にも理にかなっています。

守りがあってこその攻め

みっつめはメラトニン。夜になると分泌され、深い睡眠へ導いてくれる物質です。寝る前のスマホやパソコンの強い光は、このメラトニンを抑えてしまう。攻めの物質を上手に使うためにも、まず夜にしっかり眠って回復力を確保する——守りがあってこその攻めだと、本書は繰り返します。

板壁に立てかけられた藁の丸い的。どこを狙うか決めるイメージ

私のドーパミンは、海外のおやつ

脳内物質と言うと大げさに聞こえますが、私のドーパミンの出しどころは、ずいぶんささやかです。iHerbのような海外サイトでヘルシーなお菓子を選んで、ご褒美のおやつにすること。日本の店頭では見かけない、質の高いポテトチップスやチョコレートに当たることがあって、ヒットすれば定期購入の楽しみが増えます。「試しに買ってみる」という行為そのものが、ちょっとした報酬になっているんです。たまに外れますが、それも込みで楽しい。

それから、緑茶をなるべく毎日飲んで気持ちを整えています。樺沢氏の言う通り、やる気は根性で出すものではなく、こういう小さな仕組みで「出るように仕向ける」ものだと思います。

明日から試せる3ステップ

  • 朝、起きたらカーテンを開けて15分ほど散歩する。太陽の光とリズム運動でセロトニンを起こし、一日の頭を整える。
  • 仕事は「少し背伸びすれば届く目標」に小さく区切り、達成したら自分に小さなごほうびを。ドーパミンの報酬サイクルを回す。
  • 寝る1時間前は強い光の画面を見ない。メラトニンを守って深く眠り、翌日の集中力を仕込む。
朝いっぱいに開かれた木の窓と入ってくる光。朝に頭を切り替えるイメージ

「2倍」という数字と、単純化された脳の地図

脳内物質の働きを、一般向けにわかりやすく整理した本なので、説明は思いきって単純化されています。ひとつの物質がひとつの役割、というほど脳はきれいに割り切れません。あくまで「ざっくりした地図」として受け取り、細かな機序を学びたい人は専門書で補うのがいいでしょう。

タイトルの「2倍」も、文字どおりの数値というより、注意を引くためのキャッチと考えたほうが正直です。効果には個人差もあります。それでも、「やる気や集中は仕組みで動かせる」という視点そのものは十分に実用的で、今日から試せます。

こんな人に効きそうか

気合いではどうにもならない、やる気や集中の波に悩んでいる人。朝が苦手で、一日のリズムを立て直したい人。そういう人に、具体的な手がかりをたくさんくれます。気合いの前に、段取りがある。

私自身は、脳科学を厳密に追いたいときには、かみくだきすぎだと感じる部分もありました。これは研究書ではなく、脳の知見を毎日の働き方に翻訳した実用書だからです。

読み終えて

閉じた鎧戸の隙間から差す光の筋。一日を静かに閉じるイメージ

さて、あなたは自分の状態を、どれだけ「設計できるもの」として見ているでしょうか。本書を読むと、その手応えが少し変わります。朝に光を浴び、目標を小さく刻み、夜はちゃんと眠る。どれも地味で、特別な才能はいりません。けれど積み重なると、一日の質がじわりと変わっていきます。ご褒美は大きくなくていい、というのが私の実感です。

接客の仕事では、お客様に「ありがとう」と言っていただけた日の高揚感が、翌日の燃料になっていました。いま思えば、あれも報酬系の働きだったのでしょう。仕組みを知ってからは、小さな達成を意識して作るようになりました。

やる気が出ないのを性格のせいにして責める前に、まず脳の仕組みに頼ってみる。そんなふうに、肩の力を抜かせてくれる本でした。

📖 『脳を最適化すれば能力は2倍になる』 樺沢紫苑

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