『アンラーン Unlearn』柳川範之・為末大|学び続けるために、いったん降ろす (2022)

『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』柳川範之・為末大 表紙 学び・自己成長
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柳川範之は東京大学経済学部教授、為末大は元プロ陸上選手・現Deportare Partners代表。経済学者とアスリートという異色の二人が、対談ベースで「学んだことを意図的に手放す技術」を語ったのが本書(2022/日経BP)。VUCA時代のキャリア論として、ビジネスメディアでも頻繁に紹介された一冊。

学び続けるためには、ときどき”降ろす“作業が必要だ——成功体験ほど、降ろすのが難しい。

本書の章立てに沿った、ポイント

第1章 アンラーンとは何か

  • 「忘れる」ではなく「使わない選択をする」。学んだことを保持したまま、新しい文脈では初期化する姿勢。
  • 為末は陸上で世界選手権メダリストになった後、コーチング・教育の世界に転じる中で、競技経験の”勝ち方の癖“が逆に邪魔になったと振り返る。

第2章 なぜ大人ほどアンラーンが必要か

  • 成功した人ほど、自分の方法論を一般化しがち。経済学・スポーツ・ビジネスのどの分野でも、これが次のキャリアの足かせになる。
  • 柳川: 経済学者でも「自分が論文を書いた手法」に固執すると、新しい問題が解けなくなる。

第3章 アンラーンの作法

  • 違和感を歓迎する/初心者の質問を恐れない/専門領域の外に意図的に出る
  • 知らない」と言えることが、上級者の特権。

第4章 組織のアンラーン

  • 個人だけでなく、企業・チーム・社会にもアンラーンが必要。過去の成功KPIを、ある時点で意図的に解除する。
  • 日本企業が苦手とする領域として、二人とも具体例を挙げる。

第5章 アンラーンを習慣にする

  • 定期的に「自分の専門外」に飛び込む/書評やSNSの感想に違和感を持った時こそ学び直しのサイン/学習日記をつける

海外の議論と並べて読む

“Unlearning”は海外の経営・教育界でも頻出テーマ。Adam Grant『Think Again』(『RE: Think』邦題、2021)、Barry O’Reilly『Unlearn』(2019)、Eduardo Briceño『The Performance Paradox』(2023)など、隣接書が並ぶ。Grantは「賢さの定義は、自分の意見を喜んで更新できること」と書く——これは本書の柳川・為末の主張と完全に重なる。

YouTubeではAdam GrantのTED『Are you a giver or a taker?』、為末大の『Deportare Partnersチャンネル』などが副読教材になる。為末は同チャンネルでも本書のテーマを繰り返し更新している。

明日から始める、3つのアンラーン

1. “得意なやり方“をひとつ、意図的に封印する

会議の進め方、メールの書き方、提案資料の作り方——いつも勝っている方法を、1ヶ月だけ別の流儀で試す。違和感そのものが学びになる。

2. 自分の専門外の本を、月に1冊だけ買う

普段と違う書棚に行くだけで十分。普段読まないジャンルに時間と金を投じることが、アンラーンの第一歩。

3. 後輩や年下に、「教えてもらう側」になる

50代の経営者が20代の社員からSNSを教わる、というような体験を意図的に作る。立場を入れ替えると、自分の固定観念が見える。

関連書と読む順番

  1. 本書(まず日本の現場から)
  2. 『Think Again』Adam Grant(理論武装)
  3. 『Unlearn』Barry O’Reilly(より体系的な実践)
  4. 『LIFE SHIFT』Lynda Gratton(キャリア論の地図)

読むときに、気をつけたい点

「学んだことを捨てる」ように誤解されるが、本書の主張は“捨てる”ではなく”使わない選択をする”。経験は資産であり続ける。封印は永遠ではなく、状況に応じて出し入れする姿勢が肝。

こんな人に合いそう

  • 40代以降、過去の成功体験が逆風になり始めた人
  • 転職・異業種・新規事業を控えている人
  • 子どもや後輩の世代と、価値観のズレを感じる人

おわりに

対談形式で読みやすく、1日で読み切れる軽さ。それでいて、後からじわじわ効いてくる。「自分はもう十分学んだ」と思い始めた人にこそ、そっと渡したい一冊。

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